#15 コメディ・クラブでライブを見る
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
Joker 2019 - Arthur Fleck at Pogo's Comedy Club(QHD)
夜になっています。アーサーはスタンドアップ・コメディを見せるクラブの客席にひとりで座っています。
マレー・フランクリンの劇場が一流としたら、ここは二流でしょうか。
アーサーはコメディに関するノートをとっています。
まわりの人たちが自然に笑い声をあげているのに、アーサーひとりが、ずれて声を発しています。
これだけ見ると知能が低いように見えます。でも知能の問題というよりは、他の人が面白いと感じることを面白いと感じない精神状態の異常さを表しているシーンだと思います。
精神の異常さ、ではなくて、精神状態の異常さです。
ここに、シナリオにだけあって映画にないとても重要なシーンがあります。
クラブの出口でアーサーが一枚のチラシを手に入れます。それには「木曜日7時より、オープン・マイク・ナイト」
オープン・マイクとは、誰でも希望すればステージに立つことができることです。ギャラはありませんが、素人でもOK。
アーサーがマレーにバカにされることになった問題のライブは、なぜあのステージに立てたのか、映画を見ただけでは謎でした。あのシーンが謎だから、全部が妄想なんじゃないかと思えてくるくらいです。
ピエロの事務所をクビになったばかりのアーサーが、なぜステージの仕事を手に入れられたのかと変に思っていましたが、オープン・マイクで素人の発表会のようなものだったなら、ものすごく納得です。
これはストーリー上とても重要な情報なので、なぜカットされたのかわかりません。この『コメディ・クラブに行った』というエピソード自体が、『オープン・マイクのチラシを手に入れるために書かれたもの』のはずだったのに、なぜカットされたのか?
もし推測するとしたら、ここを隠すことで映画を見ている人は、どこからどこまでがアーサーの妄想だか、わかりにくくなったかもしれません。わざと、わかりにくくするためにこのシーンをカットしたのでしょうか。ミスリードして笑っている監督の顔が浮かびます。
わたしはシナリオのここのシーンを読んで、はじめて映画のストーリーが理解できました。