#5 ブロンクスの路上~アパートのロビー
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
The Joker returns to his mother after working as a clown "Joker" Part 006
母親がアーサーを支配している証拠
バスを降りたアーサーは、薬局に寄ってから自宅アパートへの道を歩いていきます。
この映画を代表するあの踊るアーサーのシーンの舞台である急な階段がここで登場します。疲れ果てて重そうに昇っていきます。
階段を上り切り、少し行くとアーサーが住んでいるアパートのビルがあります。
アーサーは、郵便受けを確認しますが、ここで注目です!
郵便受けの名前がP・フレックになっています。
ペニー・フレック、つまりアーサーのお母さんの名前です。
シナリオではアパートをすべてMOM'S APARTMENTと書いていますので、かなりの意図が込められています。
母親とアーサー二人が住んでいるアパートなのに『お母さんのアパート』といちいちシナリオに書く意図とは?
なぜ『フレック家のアパート』ではないのか?
わたしが思うにこれは、アーサーが母親に支配されている象徴です。
息子より自分が大事な母親は、息子を支配してそばに置き、自分の世話をさせます。(うちの実家もそうだったので。汗)
息子の自立など、想像したこともない母親です。
でも働いているのは息子です。
こういう母親は、息子を自分の所有物だと考えています。
そして、自分の都合のいいように子供を洗脳し、自分を良い母親だと信じ、子供に悪いと思う気持ちなど微塵もありません。
こういう話になると、「アーサーはもう大人なんだから、親孝行をしているのは彼の意志でしょ? 親のせいにするのは間違っている」と言う人がいますが、赤ちゃんの頃から洗脳され続けると、そこから抜けるのは本当に難しいんです。
親が死んでも、自分が60歳になっても70歳になっても、親の洗脳のせいで苦しんでいる人は世の中にたくさんいます。そして本人は、自分がなぜ苦しんでいるのかわからず、解決できると思うこともできません。傍から見たら、何の問題もなく幸せそうに見えるのに、本人は幸せを感じることができません。
そして、そういう大人が親になると、自分の親と同じことを自分の子供にしてしまうことがあります。不幸が連鎖していきます。
自分の問題を自覚することができれば、同じ問題を子供に押しつけることは避けられますが、自覚できる人はあまり多くはありません。
この問題さえ解決できたら、この世の中は良い方に変わって、みんながもっとずっと幸せに生きていけるのですが。