#12 母親を風呂に入れる
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
Joker 2019 - Arthur Takes Care Of His Mother Scene
母親は相変わらずトーマス・ウェインからの手紙が来ないと言っています。アーサーはお金の心配ならいらない、自分がコメディアンになるからと言います。
母親は「あなたが人を笑わせられるの?」と聞いてきまして、ここで、アーサーがコメディアンになろうとしていたのは、自分の望みではなくて母親の圧力だったことがわかります。
毒親育ちは、親の望みを自分の望みと思うように洗脳されます。
本当にやりたいことだったら、もっと楽しそうにしているはずだし、ジョークもたくさん思いつくはずですよね。
アーサーはスタンドアップ・コメディよりピエロのほうが楽しそうでした。
人を笑わせるだけならピエロでもいいのに、なぜスタンドアップ・コメディをやらなければならなかったか、その理由はあとで出てきます。
このシーンでの注目ポイントは、アーサーの顔が比較的すっきりしていることです。
恋に落ちた直後なので、いつもの苦しい怒りを一時忘れて、やさしい顔になっています。
いままでこういう顔をしていたときはいつも妄想シーンでしたが、ここだけは、片思いで幸せな気分のアーサーでした。
ところが、母親がトーマス・ウェインのことばかり話すので、幸せな気分もしぼんでいきます。
それでも、アーサーは母親に嫌な顔は見せません。
普通の息子なら「そんな夢みたいなことばかり言いやがって! オレが生活のために頑張ってるのに、オレじゃダメだってんなら、ここから出ていくぜっ!」くらいのことは言います。
言わないアーサーは優しいというより、支配されていますね。
親を大事にするのはいいことだと言われるかもしれませんが、ここは怒ってもいいところです。むしろ、これだけないがしろにされたら怒って、お互いに親離れ・子離れするべきでした。もっとずっと早い時期に。