2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析

I saw this movie as the main character, Arthur, not as an evil charisma, but as a man raised by a mother with a narcissistic personality disorder. The first half is in Japanese and the second half is in English. ブログ全体の前半が日本語、後半が英語です。日本語のもくじは、各記事の下にあります。

#40-2 母親のカルテを読む

2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析

 


Joker (2019) - Joker's Story Scene (3/9) | Movieclips

 

 では、本当は何があったのか?ですが。

 カルテ書類一式がでっち上げということは確実です。

=トーマス・ウェインは20歳過ぎのペニー・フレックに手を出して妊娠させてしまい、スキャンダルを恐れたウェイン家は隠蔽しようとしました。

 

 確認ですが、アーサーは養子ではありません。20歳過ぎで御曹司と恋に落ちたと信じていたペニーが、養子をとる理由がありません。

 それに養子をとれるのは、それなりに生活が安定していると証明された人でしょう。

 

(ウェイン家がとった対応についてですが、普通なら、妊娠がわかった時点で堕胎させるか、あるいは生まれた子供をペニーから取り上げて、誰の子供かわからない状態にしてどこかに里子に出すのが当たり前なのですが、それをしたら映画にもお話にもならなくなりますから、しかたありません。その選択肢が使えなかったことにします)

 

 トーマス・ウェインの息子だと知られたら、本人が大人になってからやってきて他の兄弟を強請るかもしれないので、予防策として「アーサーはペニーの養子で、本当の名前さえわからない」と法律的に証明する書類をウェイン家はつくりました。大金持ちの政治力を使えば、当時はたやすいことだったでしょう。新聞だって、ウェイン家の言うことならなんでも聞くはずで、全てでっちあげが可能でした。

 これで、本人が真相を知ったとしてもウェイン家としては大丈夫です。

 実際、この書類をアーサーは信じました。

 

 書類を読んでいたアーサーが見た30年前の面談風景ですが、アーサーがその場に立って見ている映像になっていました。シナリオでは、“アーサーは今、面談室に彼らとともに、読んでいる書類のシーンにいた”となっています。

 

 ということは、あの30年前の面談シーンは現実そのままではなくて、アーサーが書類を読みながら想像したイメージです。ペニーの表情は現実とは違います。

 あの20代のペニーは、自己愛性パーソナリティー障害の表情をもっていません。まともな20代の女性の顔をしています。つまり、現実ではない。実際にペニーは自己愛性パーソナリティー障害でしたから。

 

 でも、セリフの内容は書類に書いてあった通りです。

 ペニーは「虐待はトーマスがでっち上げた」と言い、ペニーの言い分を無効にするために彼女には妄想性精神病の診断がつけられました。

 多少、思い込みが激しいところはあったでしょうが、精神病まではいっていなかったはずです。病名をつけるのなんか簡単ですから、ペニーは一方的に精神病のレッテルを貼られてしまいました。

 

 実際はペニーは自己愛性パーソナリティー障害だけど精神病ではなく、ボーイフレンドによる虐待はなかったし、書類に書いてあった栄養失調も頭部の怪我もでっち上げです。

 

 ただし、アーサーの背中にはアザがありましたから、ラジエーターに縛り付けられたのは事実でしょう。ペニーの恋人ではないとしたら、トーマスの手下がでっち上げのためにやったのかもしれません。新聞に発表するために写真が必要です。

 

 では、なぜペニーはアーサーに、父親がトーマス・ウェインだと言わなかったのか?

「書類にサインをした」と言っていました。

 ペニーは、トーマスと自分の恋愛は本物で、トーマスのために自分は身をひいたと本気で信じていて、トーマスに「息子に父親のことは言ってはいけない」と約束させられたのでしょう。

 トーマスと同じく純粋で、妄想に陥りやすく、自分の都合のいい想像を現実のように感じてしまうたちで、しかもトーマスに直接言い含められたため、「自分はトーマスに愛されているけれど、トーマスのために…」と本気で信じてしまいました。

 トーマスについて語るペニーは本当にトーマスをいい人だと信じている風でした。

 だから何があったのかは口に出さないまま、トーマスに手紙を出し続けました。側近が手紙を捨てているからアーサーに届いていないと思い込んで。

 

 まとめますと、このシーンは『アーサーはペニーが言った“トーマスのでっち上げ”を信じず、自分が虐待されていたことを知った(誤解した)シーン』になっているようです。

 

 なお、付け加えておきますが、虐待がなかったというのは、『肉体的虐待はなかった』という意味であり、ペニーがアーサーを育てたやり方は、立派な『精神的虐待』です。

 

 監督は「アーサー役のホアキン・フェニックスに、アーサーは狂っているとだけ言った」とインタビューで語っています。

 狂っているといっても、どう見ても統合失調症ではないので、この「狂っている」の意味は、それだけ追い詰められていて暴発寸前という意味かと思われます。

 

 

 

 

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