#30 ウェイン家の屋敷へ
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
Arthur Fleck meets Bruce Wayne | Joker [UltraHD, HDR]
母親の話をすっかり信じたアーサーは、トーマス・ウェインに会いにいきます。
電車の中で、新聞に載っているトーマスの写真を切り取り、ノートにはさんで大事そうに抱きます。
この映画の中で、アーサーが最も幸せな時間です。
ソフィーを恋人だと思っているし、トーマス・ウェインが父親だと信じています。
この夢のような幸せが、これから崩れていくわけです。
映画「ジョーカー」15秒CM(衝撃編)2019年10月4日(金)公開
アーサーの妄想について少し書きます。
人はつらい環境にいると、その場から逃げて自分の心を守ろうとします。
幸せな人は、「逃げないで立ち向かえばいいのに」とおっしゃるかもしれませんが、立ち向かえない人もいるんですね。例えば、小さい子供が親に虐待された場合。肉体的虐待でも精神的虐待でも同じです。
立ち向かえる状態ではないのに逃げないでいたら、鬱で精神の動きを止めるか、統合失調症になるかしかなくなります。
それで空想の世界に逃げて、自分の意識を苦しい現実から逃がすわけですが、現実が厳しすぎた場合は解離性障害になってしまいます。
解離性障害(昔は人格分裂と言いました)では、人格が複数できてしまうことがありますが、その『できてしまった人格たち』は、本人が逃げてしまった苦しい経験を、本人のかわりに経験したわけです。人格の中には、生まれてこのかた、地獄しか知らないような人格もいます。そういう人格は、動物のように悲鳴をあげるだけということもあり得ます。
そうなったのには原因があります。
それを考えずに興味本位で馬鹿にする人がいるのは悲しいです。
それはさておき、妄想しがちな人というのは、現実が厳しかったのかもしれません。
アーサーが妄想ばかりしているのは生きるのが苦しいからだし、ペニーも多分、両親から充分に愛をもらって育ったわけではないのかもしれません。