#31 ブルース・ウェインに会う
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
Joker (2019) - Meeting Bruce Wayne Scene (1/9) | Movieclips
閉じた門越しに、アーサーはブルース(シナリオでは10歳くらい)に手品を見せます。自分の弟だと思っているので、笑わないブルースをなんとか笑顔にしようとします。
天使のような顔立ちのブルースは、表情が暗く、笑いません。これは、家庭が明るく温かいわけではないということを示唆していますね。笑顔の絶えない両親に育てられたら、こうはならないはずです。
そして出てきたアルフレッドに自分がトーマス・ウェインの息子だと言うと、「おまえの母親の妄想だ、彼女は病気だ。帰れ」と言われ、かっとなって妙にガタイのいいアルフレッドの首を絞めますが、そばで見ているブルースが怖がっているのに気づいて逃げます。
映画のあおり文句では、アーサーはものすごい悪ということになっていますが、ブルースが見ていたからアルフレッドの首を絞めるのをやめたのです。
本来は優しい性格だということがわかるシーンです。
アーサーが荒れるのは、理由があってのことです。
ところでこれは勘繰りすぎかもしれませんが、監督の思惑として、見た人に映画の解釈をあれこれしてもらうために、アーサーとブルースが会うシーンが必要だと考えて、わざわざこの流れをつくったのかもしれません。
それからこれも勘繰りすぎですが、アルフレッドのガタイが良すぎるのは、他のバットマン映画とは関係ないよというアピールでしょうか。他のアルフレッドはわたしが知る限りすらっとしてインテリな執事なのですが、このアルフレッドはまるでボディーガードです。
そして他のバットマン映画と関係ないということは「この映画の中のウェイン家の人たちは、正義の人たちではないかもしれないよ」という意味も含んでいます。
何しろ、全ての不幸の責任者はトーマス・ウェインですし。
ブルース・ウェインがバットマンになるのがアーサーの妄想でしかないとしたら、ウェイン家はいいところがないですね。