#23 職場を引き払う
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
DON'T forget to SMILE | Joker (2019)
アーサーが、自分のロッカーを空にしています。クビになったので、ひきはらっているところです。
仲間が「大変だったな」など声をかけてきて、ランダルもまるで何事もなかったかのように話をしています。
「本当に小児病棟に銃を?」と仲間の一人に聞かれ、「ランダルに聞けよ。ランダルの銃だ」
アーサーがそう言ったので、みんな少し驚きました。
はっきりものを言えるようになったアーサーの誕生です。
騒いでランダルに仕返しをしようとしないのは、このタレント事務所にもう辟易したからでしょう。タイムカードの機械は叩きこわしました。
事務所のドアを出たアーサーは、光の中にひとりで颯爽と出ていったように見えます。
シナリオではタイムカードの機械を叩き落とすシーンはなく、代わりに階段でアーサーとランダルが二人でこそこそと話をします。
ランダルは地下鉄内の殺人をアーサーがやったのか聞き、アーサーは否定しますが、あきらかに「自分がやった」と知らせるような口ぶりです。
ランダルをおちょくって楽しんでいる感じです。
このシーンはほんの少し妄想が入っているように見えます。
本当は、こんなに上手に喋ることはできなかったかもしれないけれど、「こうできていたら」…という思いが、アーサーの中で「こうできた」になってしまったのでは。
My Name Is Carnivalが流れる中、光の中に出ていくところは、かっこよすぎですね。
映画のコピーで『悪のカリスマ』というのがありましたが、それは「人を殺しても楽しそうにしている」このあたりのアーサーの態度から考えられたのかもしれません。人を殺して自信を取り戻そうとしていますし、人非人と言われてもその通りです。
でもアーサーは『悪のカリスマ』ではありません。無差別に殺したわけではなく、他に仕方ないところまで追い詰められていたから、自分を守っただけですよね。
もちろん殺人はよくないですが。