#49 燃える街をパトカーで
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
Arthur in police car | Joker [UltraHD, HDR]
パトカーで連行されながら、車の窓ごしに燃えるゴッサムシティを見て笑っています。
運転している警官が「お前のせいで燃えているんだぞ」と言いましたが、こう言われたらかえって嬉しくなります。
今まで誰も自分に振り返りもしなかったのに、「お前のせいだ」と言われたら、存在を認められたんですから笑ってしまいます。
「お前のせいだ」と言う警官に、「知ってるよ。美しいだろ」と楽しそうに答えます。
本当はトーマス・ウェインのせいだと思いますが。
その時パトカーの、アーサーが乗っている側に、救急車が激突します。ものすごく巨大なのでバスかと思いましたが、シナリオに救急車と書いてありました。
ピエロの仮面をかぶった人たちが気を失ったアーサーを助け出し、パトカーのボンネットの上に横たえます。
Joker (2019) - Thomas And Martha Wayne’s Death - Scene - Chaos In Gotham
アップタウンの映画館からウェイン家夫婦とブルースの3人が出てきて、それをピエロマスクの男が追いかけます。
暗い路地に入ったところで、呼び止め、夫婦が撃たれます。
こシナリオでは、両親が倒れた後ろに8歳くらいのブルースの姿が見えたと、悲劇を強調してあります。ここはあとでアーサーがイメージの中で見るシーンです。
8歳というのはシナリオに書いてあるのですが、以前、アーサーがウェイン屋敷に行ったときには10歳と書いてあったので、現実より幼くなっていて、いかにも妄想っぽいです。
注目すべき点として、これはアーサーが気絶している間の出来事であって、妄想というよりは彼の夢だということです。現実だとするとウェイン夫妻が殺されたことをアーサーが知るはずがないし、その様子を知ることはもっとないのに、夫妻の陰に立っていたアーサーの姿を知っていますから、やはりこれはアーサーの夢です。
アーサーは、トーマス・ウェインこそ殺す必要がありました。でも現実では難しかったでしょう。
でも自分の夢の中でウェイン夫婦が殺されたことで、彼の中ではやり遂げたことになりました。
幸せな夢です。
そもそも、大金持ちが、「今日、大きなデモがある」と知っていてのこのこと映画館に家族ででかけるはずがないし、行くとしてもウェイン家だったらリムジンで移動するはずで、あんな風に自分たちだけで徒歩で映画館を出るわけがないし、もし暴動が起こったことがわかったら映画館の特別室あたりに籠城して、危険を冒して街に出ようなんてしないでしょう。大金持ちは慎重に行動することができるはずです。つまり、ありえません。
Anarchy in Gotham (Ending) | Joker [UltraHD, HDR]
現実ではボンネットの上のアーサーが目を醒まし、大勢の人に「立て!」と励まされて歓声を浴び、少し踊ります。ひどい顔で無表情だったので本人の気分が悪かったか体が痛かったかして笑えない状態だったようですが、鼻血が出ていることに気づいてその血を左右に広げ、集まった人々のために自分の顔に笑顔を描きました。
シナリオではここにアンダーラインつきでHe is the Joker.とあります。
この瞬間にジョーカーになったとしたら、ジョーカーとは何なのでしょうか。
他人のために笑顔を見せる人?