#34 お母さんのベッドの上
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
映画「ジョーカー」US版予告【HD】2019年10月4日(金)公開
アーサーが母親と一つのベッドに寝ていたことがわかるシーンです。
この映画には、アーサーの部屋も、アーサーのベッドも出てこないので、ここまで映画を見てきた人は変だと思っていたはずです。
シナリオではここはあくまでも『お母さんのアパートのベッドルーム』であり、このアパートにはベッドルームが一つしかありません。
ここではじめて映し出されたベッドには枕が二つ並んでいて、シナリオではアーサーはこのシーン冒頭、「お母さんのベッドの上で、彼の側に横になっている」「お母さんが寝ていた側に腕を伸ばした」となっています。
ここまでとは、すごいですね。
そして『お母さんのベッド』が、これまた妙に乙女チックです。
なぜ、ペニーはアーサーのベッドを用意しなかったのか?
多分ですが、ペニーはアーサーを自分の一部と考えていたと思われます。
自己愛性パーソナリティー障害の母親なら、そうします。
自分の一部だから、自分の思い通りにして当然。そうやって育ててきました。
独立したベッドを与えることなど発想がありません。
貧困層向けのアパートといっても、広さは(日本人から見ると)充分あって、ベッドもう一つくらい置けたはずです。
アーサーは、アーサーのものではなくて自分のもの。
これは愛ではありません。自覚はありませんが奴隷と考えているのです。
アパートがいちいち「お母さんのアパート」と書かれているのも同じ理由です。
テレビには、上流階級に対するデモが始まったニュースが映し出され、そこにトーマス・ウェインが登場して、先日の発言をごまかして市長に立候補すると言っています。
マレーが自分を馬鹿にしたテレビを病院で見ていたアーサーの顔と比べると、かなりすっきりしています。まだトーマスを父親だと信じているので、希望がある表情です。
この間、トーマスの発言に怒っていたのに、お父さんを見る目は優しいアーサーでした。