#3 ソーシャルワーカーと面談 シナリオPage1
2019年公開映画『ジョーカー~JOKER』分析
The person turns to a psychiatrist "Joker" Part 003
アーサーがどういう人でどういう状況なのか、説明がなされるシーン
アーサーがコメディアンを目指していること、7種類も精神科の薬をのんでいること、病院に閉じ込められたことがあること、小さいころから病気だと言われ続けてきたこと、もう苦しいのは嫌だと思っていることなどが語られます。
それに、ナーバスになると貧乏ゆすりをし、精神の病気のせいで笑いの発作を起こすということもわかります。
The Joker gives a personal diary to their psychiatrist "Joker" Part 004
ソーシャルワーカーは日記を受け取り、シナリオではそれを見てもいいかどうかアーサーに聞きますが、映画では当たり前のように開いて読みますので、ここは撮影時に敢えてこう変更されたところでしょう。
ソーシャルワーカーが日記を出すように言ったとき、アーサーはもじもじして、すこし貧乏ゆすりをします。個人的なことが書いてあるから見せたくないんですね。それにハードコアポルノ雑誌から切り取った写真(シナリオにそう書いてありました)も。これはさすがのアーサーも、女性には見せたくないはずです。
でも「見せたくない」と言えないんです。
ソーシャルワーカーは、自分が見せたくないなら「見せたくない」と言える人なので、アーサーが嫌がっているのに気がつきもしない様子です。
アーサーがどれほど生きづらいかがわかるシーンです。
I just hope death makes more cents than life - Joker
アーサーのノートの一文を読んだソーシャルワーカーが、険しい目でアーサーを見ます。
I just hope my death makes more cents than my life.
わたしの死は、わたしの生よりもお金になるものであってほしい。
これはセンスをセンツと変えて書いてあって、正しく書くとこうです。
I just hope my death makes more sense than my life.
わたしの死は、わたしの生よりも納得がいくものであってほしい。
ジョークとしてセンツ(お金)と書いのでしょうが、深刻すぎて笑えませんね。
アーサーは最後にマレーのショーに出たとき、ノートのこの文章を見ていたし、わざと笑えないジョークを言っていましたから、このセンスをセンツ(お金)と書いたのは、わざとと思われます。
字が汚いのは、心に怒りが渦巻いているせいであって、頭が悪いからではありません。
このあとソーシャルワーカーは咎めるような表情のままで「面談は助けになっている?」と聞きます。アーサーは「病院にいたほうがよかった」と答えます。
そして「どうして監禁されたか考えてみた?」という質問に映画では「さあね(Who knows?)」と答えますが、シナリオでは「精神病だったんだろう。精神病だったから、母は僕を(精神病院に)収容したんだ」と答えます。
大人になったアーサーが精神病院に監禁されたことがあったのは、白い部屋でアーサーがドアに頭をたたきつけているシーンでわかりますが、それを手配したのが母親だったという情報は、重要であるはずなのになぜカットされたのでしょうか?
見る人を、ミスリードするためでしょうか??
このあとにも、シナリオにあった重要な情報が、まるで隠されるようにカットされています。
ジョーカーは苦しくて、薬を増やすしか楽になる方法がないと思っています。
薬を増やせないと言われ、「I just don’t want to feel so bad anymore. つらいのはもうたくさんだ」とはっきり言いました。でもこれ以上を主張することはできませんでした。